大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)1326号 判決

被告人 金謙鐘

〔抄 録〕

論旨第一点について。

本件起訴状をみると「被告人は法定の除外事由がないのに……粉末状の覚せい剤二、六瓦を所持していた」とのみ記載されているに過ぎず、その覚せい剤がいかなる薬品であるかを明示していないことはまことに所論のとおりである。しかしその記載を同起訴状末尾に記載された罪名及び罰条と対照してみると、それは覚せい剤取締法が取締の対象としている覚せい剤即ちフエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及びその塩類ならびにこれらのいずれかを含有する製剤の一種を意味するものであることが窺知できるから、訴因は自ら明白であり、犯罪事実は特定されているものといわねばならない。してみれば原裁判所が右起訴状に基いて審理判決したのは相当であつてその訴訟手続には少しも違法の点はなく、論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決がその判示事実において、前記起訴状と同じく、単に「粉末状の覚せい剤」とのみ表示したにとどまり、その覚せい剤の薬名を明示していないのは判決における犯罪事実の表示としては粗笨のそしりは免れないけれどもこれをその挙示している証拠ならびに罰条と対照すれば、それは覚せい剤取締法の対象となつているフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩であることが推認できるから、右判示は必ずしも違法であるということはできない。従つて原判決には所論のような理由不備もしくは理由のくいちがいは存在せず、論旨は理由がない。

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